CG（コンピュータグラフィックス）を手がけて20年。最初は教科書もない手探りの状態だった。らせんが伸びていく巻き貝のような形から始めた。今では、生命の遺伝情報のように、人工生命に成長のクセを与えることで、一見単純な動きながら成長の速度や大きさが微妙にゆらぎ、最初は予想もしなかった複雑な形が生まれるようになった。それが、コンピュータ（電脳空間）の中で自己組織化し増殖する人工生命体だ。細胞が分裂して成長する実際の生物のように、コンピュータ画面の中で成長し大きさも形も変わっていく。科学は常に説明や解明を求める理屈の世界。逆にアートは、感覚的で明快に説明のできない分野だが、科学をアートにうまく取り込めれば、今までにない刺激に満ちた、豊かな世界が出現するだろう。私の果てしない電脳宇宙への旅は続く。 河口洋一郎