展覧会情報
第108回 田中一光展 「人間と文字」
1995年05月08日(月)~05月30日(火)
人間と文字をテーマとするモリサワカレンダーの取材は、1983年ニューヨークのソーホー地区の落書きの撮影から始まった。私の場合、当初は「なぜ人類は字をもつようになったのか」といったきわめて素朴な好奇心からの接触であった。しかし、エジプト、ギリシア、エトルリアと取材を進めるに従ってこれは大へんな世界に迷い込んだと実感する。日本の場合、漢字を中国から輸入、仮名に発展するという、極めてシンプルな過程だが、例えば同じ東洋でもタイ文字などは、その原点をアルファベットを生んだのと同じ枝や幹に遡らねばならないのである。ともかく、あまりに奥深い文字の探索からあと戻りの出来ないまま、12年間、様々な文字の森をさまよった。 田中一光