展覧会情報
第181回 原弘のタイポグラフィ
2001年06月05日(火)~06月27日(水)
原弘は、タイポグラフィや印刷に関する豊富な知識と高い見識を備えた学者的なデザイナーであり、同時にデザインを広く社会に定着させる活動の中核を担ったデザイナーでもあった。そして原弘のデザインには、一筋の凛とした美学が貫かれている。一見地味だが、うわついた厚化粧としてではなく、デザインを最も基本的なところから立ち上げ、一定の節度と揺るぎない品格によって形成しているのだ。例えば装幀・造本の場合、タイポグラフィや用紙などの選択が、著者の思想・出版社のカラー・価格・書店での効果といった諸条件のもとで収斂され、格調高い独自のデザインを生み出している。こうした仕事を通観してみると、その内に“デザインの良心”が秘められていることに気づかされる。これは時代を超えた存在であり、私たちが原弘に学ぶべきところでもある。 永井一正