今回の展覧会は、エプソンの完璧な技術協力によって発表することができた。デジタルの急速な発展に息をのみ、想像しえなかった復元に言葉を失った。表現者として40年の歴史の中で体験した初めての驚きである。その反面、数々の旧作品を飾ることに抵抗もあったが40年の生きざまを見て頂けることも、恥半分という自分なりの思いを込めて発表した。今、世代は大きく変った。孫のような若者に、いささかの刺激になれば、という僭越な思いから、小さな歴史を見て頂きたかったのである。今、表現も多面化している。コンピューターを駆使し、想像もしなかったビジュアルの世界が生まれているが、私の中では別世界の出来事である。齢を重ねた人間の最後の抵抗といえば格好いいかもしれないが、絵筆をなめなめ我が道を歩むしか方法がない。 灘本唯人