「グラフィック（印刷）のギャラリーで映像を展示する」と、言葉では簡単に言えますが、実際あまり前例のないものである、ということに準備を始めてから気づきました。映像というのは時間軸の産物です。本当に鑑賞しようとすれば「展示」ではなく「上映」つまり映画館のようなスタイルがベストです。でも、今回どうしてもずらっと並べて俯瞰してみたかった。「展示」が与えてくれる「全体像をつかむ感じ」を獲得したかったのです。その無理な要求を押し通した結果、一番犠牲になったのは音声でした。地下1階の音響はあたかもゲームセンターの様相、こりゃまずい、と思いつつもそこに「中島信也と29人のアートディレクター」というかつてない「全体像」が姿を現したことに大きな満足を感じています。 中島信也