展覧会情報

第267回 平野敬子「デザインの起点と終点と起点」

2008年09月03日(水)~09月29日(月)

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平野敬子は関わってきた全ての仕事を、強い意志を湛える静謐な完成形へと導いてきました。携帯電話「F702iD所作」、小沢健二のCD。一貫して高い美意識が宿る作品群を並べると、その実、全ての要素が「機能している」ことに改めて驚かされます。デザインとは機能を果たすもの、という至極当然の事実が、平野の手により浮き彫りにされるのです。デザインするものを取り巻く広い周辺範囲にまで追及の手を緩めず、複雑な要素を具現化するべく挑み続けるのは、それぞれの要素が欠かすことのできない機能を担っているからなのです。極限までにシンプルな幾何学的形態による表現、飽くことのない「白」の追求、多様なメディアを横断する有機的なコミュニケーションを駆使した化粧品のブランディング、ゴールドとマゼンタを中心とした携帯電話の色展開。平野にとっては必然性に駆られた試みの数々は、その後のデザイン界の動向の布石となり、新しい基準を打ち立ててきました。平野が示すビジョンは社会におけるデザインの責任を再度考えさせる提言とも言えるのです。 本展覧会は<Graphic Wave 1998>から奇しくも丸10年の時を経ての個展です。平野のこれまでの軌跡、思考の集積を総括し、新たなる領海へ踏み出す起点となるものです。